ろすむんど・とむそんしょうこうぐん

ロスムンド・トムソン症候群

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概要

ロスムンド・トムソン症候群とは、日光過敏に関連した皮膚(ひふ)の症状、幼少期からの白内障、皮膚の萎縮(いしゅく)などを特徴とする病気の一つを指します。経過中に骨肉腫皮膚がん白血病などの悪性腫瘍(しゅよう)を発症することがあります。

ロスムンド・トムソン症候群は、RECQL4と呼ばれる遺伝子異常を原因として発症することが知られています。ロスムンド・トムソン症候群は、日本において難病指定を受けている病気の一つであり、およそ10人の患者さんがいらっしゃると報告されています(2019年時点)。

ロスムンド・トムソン症候群では日光を避けることが重要です。また、がんの発症リスクも高いため、早期発見・早期治療介入を試みる姿勢を持つことも求められます。遺伝性疾患として発症することもあるため、遺伝カウンセリングが必要となる場面もあります。

原因

ロスムンド・トムソン症候群は、RECQL4と呼ばれる遺伝子の異常を原因として発症することが知られています。この遺伝子は、DNA増殖や修復に重要なはたらきを持つタンパク質を産生する役割を有しています。

しかし、RECQL4遺伝子に異常が生じると、このタンパク質が産生されなくなってしまいます。その結果、DNA増殖や修復に障害が生じやすくなります。紫外線にさらされることの多い皮膚は、環境的に細胞にダメージが生じやすいです。また、皮膚は新陳代謝が活発であり、細胞も常時増殖をしている状況です。したがってRECQL4遺伝子異常による影響(ロスムンド・トムソン症候群の症状)は、皮膚において強く見られることになります。

しかし、一部のロスムンド・トムソン症候群の患者さんでは、RECQL4遺伝子異常を見ないこともあります。このことから、ロスムンド・トムソン症候群を引き起こす際には、別の遺伝子が関与している可能性が指摘されています。ロスムンド・トムソン症候群を発症する患者さんの中には、染色体の一部の領域が失われていることが知られています。

ロスムンド・トムソン症候群は、「常染色体劣性遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとります。人の細胞には2つのRECQL4遺伝子が存在していますが、それぞれ両親から1本ずつ受け継ぐことになります。2つのうち1つのRECQL4遺伝子が異常なだけでは病気を発症することはなく、病気の保因者になります。しかし、両親からそれぞれ1本ずつ異常なRECQL4遺伝子を受け継ぐと、2つのRECQL4遺伝子が異常を有することになります。この場合に、ロスムンド・トムソン症候群を発症することになります。常染色体劣性遺伝では、両親は病気の保因者であり、理論上25%の確率で子どもが病気を有することになります。

症状

ロスムンド・トムソン症候群では、日光に対して皮膚の過敏反応を示すことが特徴であり、日光過敏症に関連した症状は乳児期から認めます。具体的には、日焼けに伴い皮膚が赤くなり、その後、水疱(すいほう)形成、皮膚萎縮、色素沈着を認めるようになります。一般的な白内障は、加齢現象として高齢者によく見られる状態ですが、ロスムンド・トムソン症候群では幼児期の頃から白内障を発症するようになります。さらに低身長や歯の異常、性腺機能低下、骨格系の異常も認めます。

ロスムンド・トムソン症候群はDNAの修復がうまく行うことができないことから発症する病気であり、DNAに傷が入った状態の細胞が適切に治ることがなく、傷を抱えたまま増殖をすることになります。したがって、ロスムンド・トムソン症候群ではある種のがんを発症することが多いことも特徴です。具体的には、骨肉腫皮膚がん白血病などを合併することが多いです。

検査・診断

ロスムンド・トムソン症候群では、遺伝子異常により発生する病気であるため、遺伝子を対象にした検索が行われることになります。第一にはRECQL4遺伝子に異常をみるロスムンド・トムソン症候群が代表的であり、この遺伝子の異常を検索することになります。遺伝子検査で検索できる範囲にはRECQL4遺伝子を指摘できない場合でも、RecQヘリカーゼの産生量が低下していることがあります。このことを確認するために、皮膚の細胞を採取してきてRecQヘリカーゼの量を検討する方法がとられることもあります。

さらに、ロスムンド・トムソン症候群では、関連する染色体の一部が失われることから病気が発症していることもあり、このことを検索するために「FISH法」と呼ばれる方法が選択されることがあります。

また、ロスムンド・トムソン症候群では、経過中に白内障がんを発症することも知られています。したがって、眼科的な検索を行ったり、がんが発生していないかどうかをスクリーニングしたりする(画像検査や腫瘍マーカーなど)ことも重要です。

治療

ロスムンド・トムソン症候群には根本的な治療法は存在しないため、症状に合わせた支持療法が中心となります。日光過敏に関連した皮膚症状はやけどのように酷くなることもありますし、皮膚がんのリスクを挙げることになるため、可能な限り紫外線を避ける努力を行うことが必要です。具体的には、サングラスをしたり、帽子をかぶったり、洋服で皮膚の露出を避けるなどの対策が必要になります。皮膚科でのフォローアップは必須になり、皮膚がんの発生がないかどうかに留意することが大切です。

白内障を若年のうちに発症することもまれではありません。白内障を発症した際には、眼科的な手術を行うこともあります。

なお、ロスムンド・トムソン症候群は遺伝性疾患としての性格を有しています。お子さんを希望される際には、遺伝カウンセリングを行うことも大切になります。

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